味噌汁
土木関係の会社を経営していた父親は、景気の良い時は豪快にお金を使い、金儲けのためなら自分勝手なことをしていた人でした。私はそんな父親が嫌いで、中学生の頃から父親と口を聞かなくなりました。
私も大人になり結婚しました。今まで横浜から出たことがなかったけれど、夫の転勤で長野に引越すことになりました。引越し当日は午後から長野の新居に荷物が届くことになっていたので、朝早く横浜の実家を出ることにしていました。長野での新生活を思うと寂しいやら不安やらで落ち着かない。でも夫と二人で頑張らなきゃな、と気持ちが張っていました。
そんな落ち着かない朝を過ごしていると、実家の台所で父が母に話しかけている言葉が耳に入りました。
「朝早いから美味い味噌汁を出してやれ。味噌汁は温まるし、頭もスッキリするから」
夫と二人ですすったお味噌汁の、美味しかったこと。本当に体も温まり頭もスッキリしました。まともに父と言葉を交わさなくなってしまったけど、「ありがとう」という気持ちが込み上げました。
何十年も昔の話。父の娘を思う気持ちは忘れられません。